山の相続は何が大変?山林の相続で困る前に
■山の相続で大変なこととは?
山を相続すると聞くと、メリットの大きい話に聞こえるかもしれません。
でも実際には、相続放棄を選択する人も少なくありません。
その理由は、山林は土地として非常に活用しにくく、管理手間がかかるうえに所有しているだけで固定資産税が毎年かかるためです。
運用しやすい不動産とは正直なところ言い難く、相続人となっても放棄手続きをする人が多いのです。
とはいえ、先祖代々受け継いできた山林であったり、子どものころに住んだことのある懐かしい土地であったりする場合もあるでしょう。
最終的に相続するにしても放棄するにしても、しっかり基礎知識を得たうえでメリット・デメリットを踏まえて熟考し、後悔のない結論を導く必要があります。
・一般的な不動産相続との違い
規模が大きいため通常の不動産と捉えにくいですが、山林も不動産であり、相続するには通常通り名義変更も届出も必要となります。
基本的に山林の所有者が亡くなった場合は遺言書を確認し、なければ相続人全員が遺産分割協議を行い相続する人を特定することになるのです。
相続人は市区町村へ所有者届出の手続きを行い、法務局で名義変更を行います。
ここまでは通常の不動産と変わりありませんが、山林の場合はもう一つ、森林組合への相続報告を強くおすすめします。
森林組合への報告は法的なルールではありませんが、売却するにせよ管理するにせよ、相続の事実とともに組合に伝えておきましょう。
こうした意思表示は、森林組合に買い手や借り手を見つけてもらうことも含めてとても大切です。
大規模な不動産ですので、とても一人で活用するのは難しいでしょう。
どのような結論になるにせよ、森林組合の力を借りるのがおすすめです。
■山林相続に関するメリット・デメリット
山林を相続するか否かは、メリット・デメリットをしっかり理解して決める必要があります。
もちろん山林と一言で言っても条件は千差万別なため一概に言えませんが、代表的な内容についてまとめてみましょう。
・山林を相続するメリット
条件が合えば、継続的に利益を生み出す資産となります。
たとえば林業の業者や自治体に貸し出したり、山で採れる食材を取り扱う業者に貸し出したりする方法もあるでしょう。
もし自身が林業を営むことができれば、山林で採取した木材などを売却して事業にすることもできます。
山林を資源として収益化する方法です。
また近年ではキャンプなどアウトドアを楽しむ場所として運営したり、太陽光発電の場所に活用したりする事例もあります。
自分でこうした事業を経営するのは難しくても、そうした事業者に貸し出すことでオーナーとして収入を得ることができるでしょう。
・山林を相続するデメリット
前述のメリットは山林の条件に大きく左右されるため、どうしても条件が合わない場合は収益化することが難しくなります。
売却するにしても商業地に比べて売りにくい不動産なので、広さに比較して売却価格が安く、利益を生みにくくなるでしょう。
自身が事業化しにくいということは他者にとっても同じことで、たとえ林業を行っている専門業者でも利益が出せないケースも少なくありません。
それでも所有している限り管理は必須ですし、固定資産税の負担も発生します。
山林は放置すると荒れて危険になるため、自身が管理できない場合は管理業者に依頼することになり、管理コストの負担ものしかかってくることになります。
自身の相続ももちろんのこと、将来的に子や孫にも同じような問題を引き継がせることも忘れてはいけません。
■山林を所有しない場合の対処方法は?
山林を相続するかどうかの判断は、売却や賃貸が可能かどうかです。
マイナス要素のほうが大きい場合、将来を見据えたうえで決断しなければなりません。
もし所有したくない、管理できないと判断した場合、いくつかの対処方法があります。
・寄付
一つは寄付をするという方法で、条件や立地によっては自治体が受け入れてくれる可能性もあるでしょう。
もちろん相談しなければなりませんが、こちらもいきなり役所に相談する前に、森林組合に意思を伝えるのは良い手段です。
山林の情報がわかる資料を準備し、公図や不動産全部事項証明書、現状の写真などを添えて相談する方法があります。
ちなみに寄付は不動産の名義変更をしたうえで行うことですので、諸手続きは必要です。
・相続放棄
寄付は相続した形になりますが、寄付が難しい場合には相続せず放棄する形になります。
ただし相続放棄は相続人から外れる手続きなので、山林に限らずすべての財産に関して相続しない判断になります。
つまりほかに守りたい資産がある場合、山林だけを放棄することはできません。
相続放棄は住所地を管轄する家庭裁判所で相続放棄の申述をすることで処理されますが、裁判所に申述が受理されれば、すべての相続が回避されます。
・売却
森林組合や山林バンクに相談し、売却する方法があります。
山林バンクは全国の山林の売り手と買い手をマッチングするサイトですが、こちらも一度不動産の名義変更をする必要がありますので、一旦は所有者となる必要があるのです。
■まとめ
山林は、相続だけしておいて放置できるようなものではありません。
固定資産税の負担もありますが、管理ができない山林はすごいスピードで荒れはじめ、手がつけられなくリスクが大きくなります。
もし相続する予定があるなら、相続後の対応について早めにしっかり検討しておくことが重要です。
活用するにしても売却するにしても、事前に専門家に相談し、熟考しておくことをおすすめします。