SDGsに則った今後の林業の在り方について
■SDGsとは何か?
地球環境は日々切迫の度合いを増しています。
地球温暖化によって地球の平均気温は下がることを知りません。
これによって北極などの氷河が溶け、海面が上昇しています。
現状では日本にその影響は出ていませんが、この調子で海面上昇が続けば陸地が海に呑み込まれてしまうでしょう。
そのほか、資源の減少についても憂慮すべき状況が続いています。
石油や食料といった昔から不足が懸念されていた人間にとって必要不可欠な資源だけでなく、森林や海洋資源といったより大きな資源についても保全が求められているのです。
もっとも、地球環境を守ろうとするあまり経済活動が滞ってしまっては意味がありません。
経済活動が減速してしまうと不況になってしまい、貧困にあえぐ人々が生まれてしまうのです。
そのため、現在の人類は地球環境に配慮しつつ、それでいて確実な経済成長をもたらす方法を編み出すことが求められていると言って良いでしょう。
その一環として国連が2015年に提唱した理念に、「SDGs」というものがあります。
SDGsは持続可能な開発目標の略語で、現在人類が直面している課題のすべてを網羅した提言です。
貧困や食料の確保といった課題の解決はもちろんのこと、従来のような使い捨ての製品ばかりを生み出す工業からの転換を目論んだ目標と言えるでしょう。
日本でもSDGsの精神に則った企業活動が進められていますが、林業とて例外ではありません。
そこで今回は、林業がどのような形でSDGsの理念に寄与できるかを考えていきましょう。
■林業がSDGsの目標に寄与できる分野は幅広い
SDGsでは17項目の目標が掲げられています。
このうち目標15の「陸の豊かさも守ろう」は言うまでもなく林業が達成し得る目標の一つと言えるでしょう。
従来のようにただ森林を伐採するだけでなく、いかに持続可能な森林経営ができるかを考えるのはこれからの林業の課題でもあります。
とはいえ、林業が関われるSDGsの目標はそれだけにとどまりません。
目標13の「気候変動に具体的な対策を」を例に見ていきましょう。
そもそも地球温暖化の原因の一つに二酸化炭素の増加が挙げられています。
二酸化炭素の増加の原因には、地球の人口が増加、工業製品の大量生産に伴う排気ガスの増加などといったことが挙げられますが、同時に森林の減少も見逃せません。
従来は森林があることによって空気中にある二酸化炭素が吸収され、酸素に代わっていました。
しかしながら森林がなくなると二酸化炭素が処理されず、温暖化が起こってしまうのです。
地球上のありとあらゆる土地に森林を増やすことは、二酸化炭素の減少にも役立ち、地球温暖化の抑制に効果をもたらします。
■林業によって新たに雇用が創出される
SDGsでは最初の目標に貧困の解消を掲げています。
貧困の解消方法はさまざまありますが、雇用を創出し、失業者を救うこともその一つでしょう。
実は林業こそ雇用の創出を生み出す可能性を秘めた事業です。
現在世界中では人の手によって管理されないまま野放しになっている森林が数多く存在しています。
国土の多くを森林が覆っている日本も例外ではなく、広大な土地を所有者が管理しきれず荒廃していくという例が少なくありません。
これを解決するには林業により多くの従業者が集まるほかないのです。
これまで野放しになっていた森林が適切な仕方で管理されるようになれば、土砂崩れなどの心配もなくなるでしょう。
そうなれば地域の安全にもつながるので、雇用が確保されるだけにとどまらない、より大きなメリットを生むことになるのです。
■森林が新たなエネルギー源となる?
SDGsでは目標7として持続可能で近代的なエネルギー源の開発を掲げています。
現状最も使われているエネルギー源は石油ですが、これはいつ枯渇するかわからないと懸念が続いている資源です。
そのため、代わりのエネルギー源として太陽光発電や風力発電などの普及が模索されていますが、これについてもまだまだ解決すべき課題が山積しています。
そんな中、森林を新たなエネルギー源にしようとする取り組みが行われているのです。
実は木の中には相当な資源が貯蔵されており、石油にも負けない効率でエネルギーを生み出せることが発見されています。
また、排気ガスが少ないことも注目すべき点です。
石油を燃やすと二酸化炭素が排出されてしまいますが、木を燃やす場合は排気ガスをそれより少なく済ますことができます。
また、森林が主なエネルギー源になればより森林の栽培が盛んになることも見逃せません。
そうすれば二酸化炭素を吸収してくれる森林が増えるので、木を燃焼することによって生じた排気ガスの減少が見込めるのです。
この循環システムが完成すれば企業の生産活動も停滞することがありません。
そうなれば経済活動はより活発になり、SDGsが掲げる持続的な経済発展も可能となるでしょう。
林業に秘められた可能性はとても大きいのです。
■まとめ
SDGsにおいて、林業は重要な役割を担っています。
そのため、今後も林業はより重要となってくるでしょう。